Fujifilmのフィルムシミュレーション「ノスタルジックネガ(Nostalgic Neg.)」をLightroomで再現しようとしてみました。なかなか難しい。
最新機種でしか使えない
「ノスタルジックネガ」が使えるカメラは、Fujifilmの最新モデルのみとなります。比較的新しいフィルムシミュレーションの「クラシックネガ(Classic Neg.)」や「エテルナ(Eterna)」を使えても、「ノスタルジックネガ」は使えないモデルもあります。
ノスタルジックネガを使えるカメラ
(2023年6月現在)
- GFX100
- GFX100S
- GFX50S II
- X-H2S
- X-H2
- X-T5
- X-S20 NEW!
作例を探す
ノスタルジックネガで撮影できるFuji機を持っていないので、ネットで作例を探して傾向を把握します。
「Nostalgic Negative(#nostalgicnegative)」「Nostalgic Neg.(#nostalgicneg)」などで検索します。海外の検証サイトがヒットします。ただし、それらしいタグがついていても、該当画像でなかったりするので注意が必要です。Classic Chromeをベースにした「recipe」だったりします。
漫然と判断すると、
- 意外と普通。
- 階調柔らかめ。
- 温調(アンバー気味)。
- 色こってり気味(枯れてない)。
などの特徴があるようです。
rawファイルを探す
補正データの作成には測色用のrawファイルが必要です。「X-T5 raw sample」など、対応カメラ名+raw sampleで検索します。海外のレビューサイトがヒットします。
Fujifilm X-T5 production sample gallery: Digital Photography Review
Fujifilm X-T5 Review | Photography Blog
こちらからraw画像をお借りして、再現作業に使用します。
Adobeの8色相を見つける
カラーミキサーで各色を調整するために、Adobeの8色相 *1 を見つけます。
入手したrawファイルをLightroomの「Adobeカラー」で現像します。現像した画像内の、レッド(336°)、オレンジ(36°)、イエロー(53°)、グリーン(80°)、アクア(169°)、ブルー(203°)、パープル(287°)、マゼンタ(316°)を見つけます。完全に色相を一致させるのは難しいので、±2°は許容します。
1枚の写真から8色相を見つけるのは大変なので、複数のraw画像を現像して探します。
色相は手に入りましたが、それぞれ彩度・輝度は異なります。作業を進める上で誤差の発生の元になりそうですが、それはあきらめます。
色相・彩度・明度の調整
カメラプロファイルを「Adobeカラー」から「Nostalgic Neg.」に変更し、再度現像します。それぞれの数値を把握します。
「Adobeカラー」の各色の色相、彩度、明度をカラーミキサーで調整し「Nostalgic Neg.」の数値に近づけます。
これで4割ほどできました。
マゼンダの色相・輝度の補正量がかなり大きいのはちょっと気になります。アクアの彩度が高くなっているのも気になります。何かの間違いのような気もしますが、測定値通りに補正します。
基本補正を目視で調整
色相・彩度・明度を調整しても、基本的な印象が近づきません。ノスタルジックネガはやはり階調表現に特徴があるフィルムシミュレーションのようです。
ヒストグラムを確認すると、
- 白飛び・黒潰れを絶対させない、という強い意思を感じます。
- コントラストは高めです。
- 彩度は僅かに高めです。
Adobeカラーの基本補正を操作して、近づけます。機械的な測定・補正方法を思いつかないので、目視による作業です。一旦このくらい↓↓↓操作しました。
これで5割くらいの完成度です。
「ネガフィルム」風の色転びを追加する
カラープロファイルをAdobeカラーとNostalgic Neg.の間で切り替えながら作業していると、
- 明らかに全体はアンバー寄り。
- でもシャドウ部はブルー寄り。
- なので、色温度の問題ではない。
であることがわかってきました。以前の記事 *2 で気づきましたが、「ネガフィルム」風の再現のためには、やはり輝度ごとの色相の転びが効果的です。
Fujifilmの公式の説明によると、
1970年代、カラー表現の可能性を世界に提起し、芸術として定着させた「ニューカラー」の代表作を想起させる色再現を特徴とします。独特の諧調表現がハイライト部を柔らかくアンバーに描写する一方で、シャドウ部はディテールを残したままノリの良い色味を実現し、叙情的に切り取ることが出来ます。
試しにNostalgic Neg.で空の写真を1/3EV単位で露出を変えて現像してみると、このような変化になりました。
変化のピークは入力値70、107、180にありそうなので、アンカーポイントを配置して編集します。
「アンバー被り」はBlue(-Yellow)チャンネルのトーンカーブだけでは補正しきないので、Red(- Cyan)も操作します。
力尽きて終了
ある程度近づける事はできましたが、実用に足るレベルには達しませんでした。難しい……。
目視をたよりに個々の要素をひたすら調整し続けていけば実用度は増しますが、それならば評判のよいX-S20をさっさと購入 *3 してしまった方が確実です。もっと理屈っぽく再現する事で、Fujifilmの色作りを解き明かしたかったのです。
一旦中止とします。
追記
リトライしました。