coluli

安物のカメラ機材を使ったテスト撮影ばかりしています。

好みの階調/目指す階調 5

AmazonのPrime Videoで「ダーク・アンド・ウィケッド(The Dark and the Wicked)」を観ました。2020年の作品です。

ほぼ全カット、構図も色調も整っている作品でした。

映像が印象的な映画は、Premiere Proの「Lumetri スコープ」で階調を確認する事にしています。

Lumetri スコープ

0.20.07+ ↑ とにかく暗い。部屋の中が暗い。でも、シャドウはつぶれていません。

0.33.19+ ↑ 窓際のシーンでも窓の外は(8bitの256諧調なら)204以下です。

0.41.06+ ↑ 別のカットでは230でした。

0.47.23+ ↑ 通常の室内シーンは一番明るくて128です。

1.15.14+ ↑ 屋外のシーンなのに……。

1.26.02+ ↑ 一番明るかったのは、暗闇で光る懐中電灯です。

とにかく暗く、でもシャドウはつぶさず *1 、狭い輝度の範囲で全体をまとめています。

色調以外

  • どのカットの構図もきちんとしていました。90分の作品で、1カット平均6秒だったとすると900カットです。900カット決まった構図を作り上げることを思うと、映画監督(撮影監督?)ってやっぱりすごいな、と思います。
  • 固定構図でゆっくり少しずつズームインする(またはドリーで近寄る)カットはこの映画に限らずよくありますが、
  • ゆっくりドリーで近寄りながらわずかに回り込みのパンをするカットが印象的でした。単純な「カメラ固定カット」以外が多かったです。
  • (発話する)登場人物に都度丁寧にパンするカットもあり、「ねちっこいカメラワークだなぁ」と感じました。
  • アナモルフィックレンズ特有のフレアを使ったカットもふんだん(?)にあり、画作りにはこだわっているのだろうな、と感じます。
  • テキサスの田舎町の一軒家を中心にしたお話なので、コストはいくらでも抑えられそうですが、羊にまつわる各シーンなど、けっこうな金額がかかっていそうでもありました。その分キレイです。

誰の画作り?

  • やはり監督なのでしょうか。ブライアン・ベルティノの作品をチェックしたいところですが、どれも映画としての評価は低めです。
  • あるいは撮影監督なのでしょうか。トリスタン・ネイビーが撮影した作品は本作と「死霊館のシスター 呪いの秘密」です。死霊館シリーズは割と好評なので、確認してみようと思います。

面白い?

面白いです。まぁ。

ストーリーは、姿を見せない「邪悪なもの」が登場人物を怖がらせて一人、またひとりと自殺に追い込む、というものですが、死生観などはあまり合いませんでした *2 。年寄りは死ぬもんだし、死をむやみに忌避したがるのはどうも素直に受け入れられません。私がキリスト教徒だったらもっと面白い(怖い)のかもしれませんが。

とにかく映像がよかった *3 ので、最後まで楽しく(?)観れました。損した感じは全くしません。Prime会員なら(今なら)無料です。


*1:オール・ユー・ニード・イズ・キル」を観たときは、クライマックスのシーンが暗くてよく見えず、結構辛かった覚えがあります。

*2:死生観が納得できる映画としては「ジェイコブズ・ラダー」が好きです。

*3:作品の評価自体がそんなに高くなく、映像が印象的な映画は他にもあります。例えば「アナザープラネット」(の逆光のシーン)とか、「フロッグ」(のドローン撮影のカット)など。