キヤノン機のraw現像にはキヤノン謹製のraw現像アプリ、「Digital Photo Professional 4(DPP4)」を使っています。
DPP4上でDLO(デジタルレンズオプティマイザ)を使用すると、DLO対応のキヤノン製レンズであれば、デジタル補正で高画質になるからです。これまではAdobeのLightroom Classicを使っていましたが乗り換えました。
DPP4はLightroomに比べ多機能ではありませんが、raw現像の基本機能は揃っています。ただ、困ったことに撮影に使用するカメラ・搭載されるDIGICの世代 *1 により、DPP4上で操作可能な項目が異なります。
手持ちの機材を使って調べてみました。
EOS R50(DIGIC X)
DIGIC X搭載の(機種のひとつ)EOS R50では、DPP4の機能をおおむね全て使えるようです。
顔ライティング補正
ただし、顔認識と連動した露出補正「顔ライティング補正」は、対応カメラ(最新の上位機種)で撮影していないと操作できません。DPP4のマニュアルによると、
EOS R1、EOS R3、EOS R5、EOS R5 Mark II、EOS R5 C、EOS R6、EOS R6 Mark II、EOS R7で撮影したRAW画像
でのみ使えるとのこと。
マニュアルの「注意」を読むと、撮影時の設定なしに(対応機種なら)後から使える機能のようにも読めます。実際どうなのでしょう。マシンパワーをそれなりに要求するようなので、再度DPP4上で顔認識を行っているのでしょうか。それだったらどの機種で使えてもよさそうなものですが、ちょっともやもやします。
当該機種を持っていないので詳細は不明です。
EOS RP(DIGIC 8)
DIGIC 8搭載の(機種のひとつ)EOS RPでは、下記のような制限がありました。
明瞭度
DIGIC X搭載機種より古いモデルでは、DPP4で「明瞭度」は使えません。グレーアウトしています。
なんだよふざけるなよ、という感じです。撮影時に(撮って出し画像に)明瞭度が使えるようになったのはDIGIC Xからですが、明瞭度自体はraw現像アプリではかなり以前からある *2 ごく普通のパラメータです。撮影時に埋め込まれた情報を使うわけではないので、どんなrawファイルにも適用できるはずです。
ケチくさいなぁ。
オートライティングオプティマイザ
撮影状況に応じてコントラストをいい感じに上げたり下げたりしてくれる「オートライティングオプティマイザ」ですが、下記のような挙動でした。
撮影時に「高輝度側・諧調優先」をオンにしていたrawファイルでは、現像時にオートライティングオプティマイザは使えません。
えええええええ? たしかにこの世代のカメラでは、撮って出しの設定では「オートライティングオプティマイザ」と「高輝度側・諧調優先」は排他(同時には使えない)ですが、raw現像時でも使えなくするってどういうことよ。これ絶対技術上の制約でなく、単に使えなくしているだけでしょう。
ほんとにケチくさいなぁ。
EOS M2(DIGIC 5)
DIGIC 5搭載の(機種のひとつ)EOS M2では、下記のような制限がありました。
明瞭度
上記のRP/DIGIC 8同様、DPP4では「明瞭度」は使えません。ケチくさい。
オートライティングオプティマイザ
上記のRP/DIGIC 8と挙動は同じです。撮影時に「高輝度側・諧調優先」を設定していると現像時にオートライティングオプティマイザは使えません。ケチくさい。
高輝度側・諧調優先はC.Fn
ちなみに、この世代のEOSは「高輝度側・諧調優先」がC.Fn(カスタムファンクション)の項目になっています。「詳しくない素人は使ってくれるな」という奥の方にある設定項目です。で、最近気づいたのですが、C.Fnでの設定変更は、フルオート撮影・SCNモード撮影では無視されるようです。すなわち、それらのモードでは「高輝度側・諧調優先」は必ず(デフォルトの)オフになるので使えません。その代わり、DPP4上では(排他の機能の)オートライティングオプティマイザは常に使えます。
んだよいいから好きなように使わせてくれよ。ケチくさいなぁ。
EOS Kiss X5(DIGIC 4)
上記のM2/DIGIC 5と同様でした。使い込むうちに追加で見つけてしまうかもしれません。
どの機種でもできること
アンシャープマスク
ここまでカメラごとに現像時の機能に細かく制限をつけておきながら、アンシャープマスクはフルで使えるのです。ふざけるなです。
強さ・細かさ・しきい値の3つのパラメータでシャープネスを指定する「アンシャープマスク」に相当する新しいシャープ設定は、DIGIC 7以降、カメラ側で設定できるようになりました。同時にPhoto Style「ディティール重視」が追加されました。
カメラ機能との統一を機能制限の根拠にするなら、DIGIC 6までは0~7の「シャープ」のみ使えるようにし、アンシャープマスクは使えないようにしないとつじつまが合いません。まったくもってふざけるなです。
どの機種でもできないこと
自然な彩度
「自然な彩度」はぜひ使えるようにしてほしいものです。「カメラ側には搭載されていない」から搭載しないのでしょうか。こんな基本機能 *3 も載せないから、だれもDPP4を使わないのです。
その他
(クラウド上で行う)ノイズリダクション・アップスケーリング・デジタルレンズオプティマイザ
キヤノンのクラウド上のAIで行われるデジタル補正を行うには、ユーザー登録と課金(サブスクリプション)が必要です。お試し期間はありますが、その後は有料です。
これに関しては、ケチくさい、とはいいません。が、制限付きの無料使用(月10枚までとか)とかができた方がいいかな。
感想
DPP4の機能制限は基本的な方針が感じられず、整合性もありません。一方ではDLOでジャンク寸前の古いレンズの補正データを追加してくれているのに、その一方で古いカメラに制限をつけて使いづらくする。まったくもってちぐはぐな印象です。
社内政治とかいろいろあるのでしょうか。何とかしてほしいものです。