coluli

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『MEN』のカラーグレーディング

AmazonのPrime Videoで2022年製作の米英合作のホラー映画『MEN 同じ顔の男たち』を観ました。とても面白かったです。

「自然な彩度」マシマシ

映画前半で印象的だったのは、主人公の女性が、宿泊している屋敷の近所を散策するシーンです。

「よくもまぁ、こんなに素敵な場所を見つけたもんだなぁ。ロケハンチームは大手柄だなぁ」

と思うと同時に、

「おおおおお、ここまで彩度上げますか」

と笑ってしまいました。

彩度を目一杯上げた映像はまったく「シネマライク」ではありませんが、主人公が感じたであろう「非現実的に美しい」場所に巡り合った高揚感は非常によく伝わりました。

なかなかにインパクトが強かったので、手直なrawファイルを似たように現像してみました。

_IGP2713-強化-NR

Pentax K-30で撮影したrawファイルを、カメラプロファイル「Vibrant(鮮やかな・きらめく) *1 」で現像しました。さらに「自然な彩度(Vibrance|色つや)」を+20しています。グリーンの色相を僅かに転ばせました。

_IGP2740

(撮影した場所は和風 *2 ですが)色調はこんな感じでした。

今まで自分の撮った写真や動画をここまで鮮やかに処理したことはありません。目的に合致していればこれも「あり」なのですね。頭が柔らかくなります。

映画業界のプロはありきたりな「シネマ風の映像」からはもう脱却済みで、各自オリジナルの映像表現を模索しているのだろうなぁ、と感じました。

映画として

面白い映画、語りたくなる映画だったので、もう少し。

同じ顔の男たち

男性達は全て一人の俳優が演じています。でも映画観てる間は、全く気づきませんでした。

私がアジア人なので、白人(イギリス人)の風貌を見分けられないからかもしれませんが、配給側もわざわざ「同じ顔の男たち」と副題をつけているので、おそらく誰が見てもわかりづらいのだろうなと思います。

企画の段階では「これはいける! 不気味な感じになるぞ!」と考えていたけれども、いざ実際に作ってみたら、メイクや特殊効果の出来が良過ぎてわからなくなってしまった、といったところではないでしょうか。

唯一、お面をかぶった少年の登場シーンだけは非常に不気味な雰囲気になっていました。肩幅の狭い少年の身体に、あのおっさん顔がついているのはなかなかのキモさです。私はMAD Magazineを連想しました。

例のシーン

例のシーンは1982年のSFホラー「XTRO(エクストロ)」 *3 へのオマージュです。国内での劇場公開はなかったそうですが、私は当時レンタルビデオで楽しみました。つい最近までPrime Videoにもあったのですが、指摘する人はあまりいません *4

部位を変えて3回も4回も繰り返すのは、男性には「産む器官」がついてないので、1回こっきりだと「どこから産んだの?」というツッコミが入るからだと思います。

考察厨

「林檎」「魔よけの石像」「グリーンマン」「タンポポの単為生殖」「男性嫌悪」など、一生懸命に蘊蓄片手に話のつじつまを合わせようとする記事を複数見かけましたが、つじつまが合っても面白さは特に増さないのであまり気にしなくてよいと思います。ビジュアルを楽しみましょう。


*1:日本語の名称は「雅(MIYABI)」です。

*2:文京区の六義園です。

*3:えげつない映像、インパクトの強い映像があれば映画は成立する、という強い信念に基づいた映画なので、機会があったらぜひ観て欲しいと思います。

予告編だけでお腹一杯になるかもしれません。

*4:Xのポストでひとつだけ見かけました。