coluli

安物のカメラ機材を使ったテスト撮影ばかりしています。

Fujifilm「フィルムシミュレーション」の色相

_DSF0157_PRO Neg. Hi

Fujifilmの「フィルムシミュレーション」ですが、巷では「撮って出しでもすごくキレイ」「この色はraw現像では再現できない」など、えらく持ち上げられています。ググるとたくさん出てきます。

私も以前から気になっていたので、先日エントリー機を購入して使ってみましたが、確かにまぁ、綺麗ではあります。

ただ、今時のデジカメはどれもよく写ります。基本どの機種でもキレイです。

Fujifilmの画づくりは、他社のそれと比べてどのように違うのでしょう。そもそも本当に違うのでしょうか。単にFujifilmのイメージ戦略がうまくいっているだけで、実は他社と五十歩百歩だったりしないでしょうか。

どう違うのかわからないまま使い続けるのも気持ち悪いので、ちょっと調べてみました。

空の色

フィルムシミュレーションの各モード *1 で、青空を撮影しました *2 。WBはオートです。その後、Photoshop上で色相を調べました。

空の色相_sRGB

割とわかりやすい色相のずれが確認できました。

  • PROVIAやASTIAの空の色はだいたい標準的な青。
  • VELVIAはややマゼンタ寄り。再現性よりも「ポジっぽさ」重視。
  • Classic Chromeはややグリーン寄り。再現性よりも「安い印刷物 *3 っぽさ(?)」重視。
  • PRO Negのふたつはどちらも同じ。コントラストが異なる。

基本6色相

市販のカラーチャートを直射日光下で撮影しました。WBはオートです。その後、チャート内の基本6色相の部分をPhotoshopで調べてみました。

6色相_sRGB

画面内に書ききれないので、スプレッドシートにまとめました。

フィルムシミュレーション毎の色相の変化(sRGB)

標準的な色相からのずれ量を計算しました。10°以上差のあった色相のセルに色をつけています。

測定時の誤差の可能性を気にせずざっくり結論づけると、

  • 主に緑〜青の色相で、意図的な味付けをしている。具体的には、緑色が黄緑色寄り、シアンが緑色寄り。
  • マゼンタの色相で、意図的な味付けをしている。

植物の緑や人肌に影響が大きそうです。たしかにこのくらいずらせば、「画作り」の個性として認識されそうです。

Lightroomでプロファイルを変更して現像

本来であれば、他社のカメラでも同様の作業を行いたいところですが、面倒なのでLightroomのカラープロファイルを切り替えて、「Adobeカラー」と比較してみました。

プロファイル「Adobeカラー」の場合は色相のずれはさほど大きくありません。やはりFujifilm独自の「画作り」であることは確かなようです。

改めて前回の撮って出し *4 を見ると、う~ん、わかったようなわからないような。この微妙さが「Fujifilmは他社となんか違う」といった評判につながっているのかもしれません。

輝度ごとの色相

例えば、「ティール&オレンジ *5 」であれば、ミドル(肌の輝度)はオレンジ寄りに、ハイライトとシャドウは青緑よりに、輝度ごとに異なる色相のずらしを行います。今回の各モードではそのような挙動はみられませんでした *6

ただし、Classic NegやETERNAなどのフィルムシミュレーションも同様であるかは不明です。むしろ変えないと「シネマっぽさ」「(ネガ)フィルムっぽさ」は再現できないはずなので。

現像ソフトでの適用

LightroomやCapture One *7 を使えば、raw現像時に撮影時と異なるフィルムシミュレーションをあてがうことができます。 Lightroom上でプロファイルの切り替えができることを確認できました *8

もちろん、他社カメラで撮影したrawファイルには使うことはできません。

他メーカーへのカメラへの適用

ググると「Lightroom用のVELVIA設定」「Classic Chromeプロファイル」「俺のCC」など結構出てきますが、どれもraw現像時に適用するものです。 撮って出し用のプロファイルの場合は、Canon機なら「Picture Style Editor」を使って作れそうです、っていうかあります。


*1:使用しているのはエントリー機のX-T100なので、「ETERNA」や「Classic Neg」などのフィルムシミュレーションは搭載されていません。残念。

*2:6回きちんと撮影しましたが、どれか一つでraw撮影し、Lightroom上でプロファイルをあてがえばよいことに後から気づきました。

*3:Fujifilmの解説ページによると、「ドキュメンタリータッチの写真集や雑誌から汲み取った雰囲気を再現しました」だそうです。ふ〜ん。

*4:

*5:

*6:一つのrawファイルからLightroomで露出を変更した画像を複数作成し、確認しました。

*7:できるはずなのですが、慣れていないからなのかできませんでした。

*8:X-T100のrawファイルでは、未対応のフィルムシミュレーション(「ETERNA」など)は表示・選択できませんでした。