Fujifilmの「フィルムシミュレーション」ですが、巷では「撮って出しでもすごくキレイ」「この色はraw現像では再現できない」など、えらく持ち上げられています。ググるとたくさん出てきます。
私も以前から気になっていたので、先日エントリー機を購入して使ってみましたが、確かにまぁ、綺麗ではあります。
ただ、今時のデジカメはどれもよく写ります。基本どの機種でもキレイです。
Fujifilmの画づくりは、他社のそれと比べてどのように違うのでしょう。そもそも本当に違うのでしょうか。単にFujifilmのイメージ戦略がうまくいっているだけで、実は他社と五十歩百歩だったりしないでしょうか。
どう違うのかわからないまま使い続けるのも気持ち悪いので、ちょっと調べてみました。
空の色
フィルムシミュレーションの各モード *1 で、青空を撮影しました *2 。WBはオートです。その後、Photoshop上で色相を調べました。
割とわかりやすい色相のずれが確認できました。
- PROVIAやASTIAの空の色はだいたい標準的な青。
- VELVIAはややマゼンタ寄り。再現性よりも「ポジっぽさ」重視。
- Classic Chromeはややグリーン寄り。再現性よりも「安い印刷物 *3 っぽさ(?)」重視。
- PRO Negのふたつはどちらも同じ。コントラストが異なる。
基本6色相
市販のカラーチャートを直射日光下で撮影しました。WBはオートです。その後、チャート内の基本6色相の部分をPhotoshopで調べてみました。
画面内に書ききれないので、スプレッドシートにまとめました。
標準的な色相からのずれ量を計算しました。10°以上差のあった色相のセルに色をつけています。
測定時の誤差の可能性を気にせずざっくり結論づけると、
- 主に緑〜青の色相で、意図的な味付けをしている。具体的には、緑色が黄緑色寄り、シアンが緑色寄り。
- マゼンタの色相で、意図的な味付けをしている。
植物の緑や人肌に影響が大きそうです。たしかにこのくらいずらせば、「画作り」の個性として認識されそうです。
本来であれば、他社のカメラでも同様の作業を行いたいところですが、面倒なのでLightroomのカラープロファイルを切り替えて、「Adobeカラー」と比較してみました。
プロファイル「Adobeカラー」の場合は色相のずれはさほど大きくありません。やはりFujifilm独自の「画作り」であることは確かなようです。
改めて前回の撮って出し *4 を見ると、う~ん、わかったようなわからないような。この微妙さが「Fujifilmは他社となんか違う」といった評判につながっているのかもしれません。
輝度ごとの色相
例えば、「ティール&オレンジ *5 」であれば、ミドル(肌の輝度)はオレンジ寄りに、ハイライトとシャドウは青緑よりに、輝度ごとに異なる色相のずらしを行います。今回の各モードではそのような挙動はみられませんでした *6 。
ただし、Classic NegやETERNAなどのフィルムシミュレーションも同様であるかは不明です。むしろ変えないと「シネマっぽさ」「(ネガ)フィルムっぽさ」は再現できないはずなので。
現像ソフトでの適用
LightroomやCapture One *7 を使えば、raw現像時に撮影時と異なるフィルムシミュレーションをあてがうことができます。 Lightroom上でプロファイルの切り替えができることを確認できました *8 。
もちろん、他社カメラで撮影したrawファイルには使うことはできません。
他メーカーへのカメラへの適用
ググると「Lightroom用のVELVIA設定」「Classic Chromeプロファイル」「俺のCC」など結構出てきますが、どれもraw現像時に適用するものです。 撮って出し用のプロファイルの場合は、Canon機なら「Picture Style Editor」を使って作れそうです、っていうかあります。
*1:使用しているのはエントリー機のX-T100なので、「ETERNA」や「Classic Neg」などのフィルムシミュレーションは搭載されていません。残念。
*2:6回きちんと撮影しましたが、どれか一つでraw撮影し、Lightroom上でプロファイルをあてがえばよいことに後から気づきました。
*3:Fujifilmの解説ページによると、「ドキュメンタリータッチの写真集や雑誌から汲み取った雰囲気を再現しました」だそうです。ふ〜ん。
*4:
*5:
*6:一つのrawファイルからLightroomで露出を変更した画像を複数作成し、確認しました。
*7:できるはずなのですが、慣れていないからなのかできませんでした。
*8:X-T100のrawファイルでは、未対応のフィルムシミュレーション(「ETERNA」など)は表示・選択できませんでした。